宗片恵美子さん(イコールネット仙台代表理事)を講師にお招きし、ジェンダーの視点から防災・災害復興を考えました。
李善姫さん(東北大学大学院法学研究科GCOE「グローバル時代の大序共同参画と多文化共生」フェロー)を講師にお招きして、ボランティア講座を行いました。
李善姫さんは在日18年で、文化人類学を専攻。現在は東北の農村の女性について研究をしています。当日のレクチャーから次のようにポイントをまとめました。
国際結婚をした女性たちについて
I. 結婚移住の問題・・・どう見るべきか
1.仲介型国際結婚
①受入れ側の事情
少子高齢化と農村、都市間の格差、
農村で働きながら後継者を産む女性が必要
②女性側からすると、日本は先進国で、豊かな生活ができる。
ハイパガミー*の理論
* hypergamy: 「上昇婚」。
花婿とその親族の清秋身分が花嫁のそれより高い婚姻のこと
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)
2.結婚移住女性に対する二つの視点
①批判的議論
・仲介型国際結婚は人身売買に等しい。
⇒仲介型国際結婚は認めてはいけない。
移住女性はかわいそう。
②肯定的議論
・出身国において周辺化されていた女性たちが新たなチャンスをつかめる機会。
・移住が女性の生活のエンパワーメントにつながる
=女性たちの主体性
・社会的ジェンダー構造を強調することで、
結婚移住者はみな弱者であるとする言説
・ホスト社会
II. 「見えない化」されている外国人移住女性たち
日本の外国人と日本人の配偶者数は、1970年代から推定約40万人。
国際結婚のピークは2006年で、総数44,701組に達した。
★日本における「外国人花嫁」の法的仕組み
・法的地位:日本人配偶者ビザ1年 or 3年
・結婚後3年〜5年以上経過すると一般的永住者資格の申請可
<問題>
①永住資格取得前の離婚 ⇒ 人身売買や犯罪につながる
②永住資格申請のための結婚もありえる
★石巻における外国人住民の実態調査(アンケート)実施
石巻調査からの課題
・結婚移住女性が家事の担い手
夫や婚家への依存度が高い
・日本語の壁
・目先の就業状態
*経験と知識のネットワーク
*外国人にとってのリスクコントロール(移住先の経験・ネットワーク不足)
*外国人は地域社会とその家族における「リスクファイナンス」
・社会構成員としての承認
・多様性への承認(外国人とつながっていることを利点として承認する)
*結婚移住女性たちの新しい動き
・エスニックコミュニティの組織化が行われている。
南三陸、石巻、仙台、いわき etc.
横のつながり
(文責 かやば)
テーマを絞ったボランティア講座(全3回)の1回目です。講師にお迎えしたのは、仙台市聴覚障害者協会事務長の菅原伸哉さん。震災の翌日にはすぐに救援活動を開始したそうです。パワーポイントを駆使したプレゼンテーションを、手話通訳者の奥山さんがしっかり伝えてくださって、熱い思いを共有しました。
地震発生!! あなたならどうする?
あなたならどうする?
どこに逃げる?
情報はどこから?
津波が来たら?
菅原さんは、その時、仙台市五橋の福祉プラザ8Fにいました。まるでこの世の終わりのようなすごい揺れに襲われました。パソコンを押さえるのが精一杯だったそうです。
阪神と東日本の震災の違い
東日本大震災 死亡者の9割は津波による 60歳以上の方が多い 音が聞こえないと—情報が来ない 津波経験がない |
情報が入らない
停電でも使えるラジオは大きな情報源でした。けれども聴覚障害者には情報が入りません。
雪も降ってきました。菅原さんは徒歩で帰宅し、家族のぶじを確認します。引っ越しして間もない自宅で、どこにマッチがあるかもわからないくらいでした。
救援活動立ち上げ
3.12の朝刊で津波を知って、救援活動を開始します。
ガソリンスタンドやスーパーに何時間も並びました。お知らせが音声のみ! 情報が把握できません。ガソリンも整理券が必要でしたが、せっかく並んでも買えないんです。「何時まで〜」というお知らせはまず書いてほしいと思いました。
さて震災翌日には、手書きで組織図を作りあげます。阪神淡路大震災当時の活動記録『負けへんで!』を参照したそうです。
経理
事務局 行動隊
ボランティア—そうじ、運搬、和室提供など
支援物資
相談・ケア
ニュース
渉外 FAX等の受付
安否現状把握
マスコミ対応
中央本部
行政対応
通訳手配
この組織が聴覚障害者救援宮城本部になり、12月1日には全日本ろうあ連盟と宮城県が連携した「みやぎ被災聴覚障害者情報支援センター」(みみサポみやぎ)が設立されました。
安否確認・支援活動
活動の柱はまず安否確認。支援活動にも取り組みました。
連絡手段はFAXが一番 聴覚障がい者は書くのが苦手 イラストや矢印で相手に わかりやすく! |
メールのノウハウ
筆談と同じく わかりやすく! |
(1)携帯メールやHPによる安否確認
ただし、HPは1時間で閉鎖
名簿が古かったため
携帯の変換ミスによる名前の不一致
情報の混乱
載せてほしくない、自分の名前がない、○○さんの名前がない、許可なく掲載したのはなぜか、etc
(2)避難所巡回による安否確認
情報伝達 ラジオの情報→通訳→書き出す→貼り出す
避難所に貼り紙を掲示
●暗くて手話が見えない ライターの光で
(3)気仙沼市内の被災ろう者の救援
3.17〜
救援車両の許可証を県庁でもらってくる
ガソリンを求めて栗原→岩手県前沢で満タンに→一関経由で気仙沼へ
気仙沼市役所で担当者に所在を調べてもらう
3.18〜
東北放送ラジオで、聴覚障がい者への配慮を呼びかけ
3月下旬〜
自宅訪問
薬がない、などの訴え
仙台市内と違って近隣のつながりが深い。どこにだれが住んでいるか、お互いに 知っている環境
宮城県ろうあ協会の会員は 安否がわかる 非会員は・・・確認できない |
手帳をもっている人は 宮城県に6000人 協会の会員 363人 ぶじ確認 358人 |
(4)支援活動いろいろ
季節や被災地の状況によりほしいものが変化
・物資申請・情報のやりとり
絵や写真をのせる工夫をする
ほしいものに○をつけ、数を入れるだけにしてFAX送付。
FAXで返事をもらう
・ 7月復興イベント 庄﨑隆志さん(全日本ろうあ連盟60周年記念映画「ゆずり葉」出演者)ら来県
・ 9月ほっと手話祭りほか
・ 12月「みやぎ被災聴覚障害者情報支援センター」(みみサポみやぎ)設立
あの時を忘れない
『聴障宮城ニュース あの時を忘れない』
菅原さんが紹介してくださった貴重な冊子。『聴障宮城ニュース』は宮城県ろうあ協会の機関紙(月1回発行)です。震災後の1年分(11年4月~12年3月)の一部と、被災した聴覚障害者や手話通訳者の声をまとめたのが『聴障宮城ニュース あの時を忘れない』。
震災後に紙面の全てを白紙に戻して作り直したことなど、当時を伝える重要な記録だそうです。被災体験を集めた「みんなの声」コーナーも収められています。
仙台YWCAでも図書として備えています。お読みになりたい方はどうぞ。
仙台YWCAでは手話サークルが長く続いています。質問タイムのなかで、参加者から、奥山さんの手話通訳がすばらしかったと感謝のことばがありました。今回は災害時の備えや留意点に気づかせていただくいい機会でした。YWCAの活動に生かしていきたいと思います。 (いわさき)